敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
聖はテーブルに両肘を突き、身を乗り出した。なんだかノリノリだ。
「いくらって言われても……」
なくなると思っていた同居話が、違う意味をもっていきなり現実味を帯びてくる。
「ほかに仕事に目星があるならそっちを優先してもらってもかまわないけど、俺のアイデアもなかなかいいと思わないか?」
彼の言うように、現在無職の七緒にはとてもありがたい話ではある。祖父たちに嘘をついた手前、しばらく恋人を続けていくつもりだし、その途上に住込みの家政婦があるのは好都合。それも得意な料理分野でと言ってくれているのだから。
「今のお話は冗談ですか? それとも本気ですか?」
「本気も本気。乗る気になった?」
「だんだんとその気になってきました」
「よし、あとひと息だな。生活費の心配はいっさいなしで、これ」
聖が右手をパーにして前に突き出す。