敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
同居はさておき、仕事が決まったのは喜ぶべき点。孝枝にはまた秘密ができてしまったが、これも次のお見合いを回避するためにやむを得ないと腹をくくる。
そうこうしているうちに先付が運ばれてきた。
胡桃豆腐や菊花の酢漬けなどが、美しい皿に彩りよく並んでいる。
「さすが懐石料理ですね。盛り付けが繊細」
料理をおいしいと感じるには見た目も重要な要素のため、同じ料理人としてとても参考になる。
「七緒の専門は?」
「専門というか和食の教室を受け持っていました。けどフレンチやイタリアンの助手もしたので、凝ったものでなければだいたい大丈夫です」
「それは楽しみだね」
孝枝とふたりの食卓は年齢的な理由もあり、あっさりした和食中心だったが、聖だともう少しバラエティに富めると密かにワクワクする。
仕事を離れて一カ月だが、やはり料理が好きなため俄然やる気が沸いてきた。聖が楽しみにしてくれているのも大きいだろう。
「お給料をいただく以上、しっかりサポートさせていだきますね」
「期待してる」