敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「がんばります」


胸の前で左手に拳を握り、決意を示す。聖は微笑みを返してよこした。

その後ゆっくりと料理が進み、出てきたのは京懐石ならではの湯葉料理。お品書きには〝湯葉の春巻き〟とある。口に運んだらサクッと軽い音がした。

(餡はなんだろう。……あ、鶏肉だ。しいたけと生姜の香りがとってもいい。味つけは……)

口の中で転がして味をたしかめていたら、正面から視線を感じて顔を上げた。


「難しい顔してどうした?」
「あっ、ごめんなさい。味の分析をするのが癖で」


職業病と言ってもいいかもしれない。なにで味つけをしているのか、つい探りたくなる。


「なんだ、口に合わないのかと思ったよ」
「その逆です。とってもおいしい」


だからこそその味を再現したくて真剣になるが、一緒に食べている人には不可解かもしれない。


「へぇ、根っからの料理人なんだな」
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