敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「私にもどこか悪そうなところはありますか?」
気になって尋ねた。思いのほか聖が真剣な眼差しで見つめてくるから、大きな病気を指摘されたらどうしようと緊張して体が強張る。
「七緒は……」
「……はい」
言葉をため、じっと観察して訝しげに目まで細めるから嫌な予感に包まれていく。
「目が綺麗だな」
「え? ……目が?」
予想と違う指摘に拍子抜けする。
「白目が子どもみたいにクリーンだ」
「……今のは褒められたんでしょうか」
「たぶん?」
目をぱちくりさせて聞き返したら、聖はお馴染みの言葉で返してよこした。
「病的なところはないってことですか?」
「ぱっと見はね。心配ならうちで人間ドックを受診したらいい。俺が隅々まで診てやろう」
「……言い方がいやらしいです」
聖はククッと肩を揺らして笑った。
その後も上品な味の京懐石を楽しみ、美奈子に見送られて雨隠れを後にした。