敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
聖に送られ、自宅の前に車が停車する。
「今日はご馳走様でした」
割り勘で払おうと考えていたが、七緒がトイレで席を外した隙に支払いを済ませるスマートな対応に打つ手はなかった。
「おばあ様に、仕事が見つかったと報告ができるな」
「それを言ったら本末転倒です」
聖との同居は、祖母たちの前では結婚への第一歩としなくてはならない。給料が発生しているなんて知られたら大変だ。
もちろん聖も冗談で言っているだろうが。
「俺との同居の話、しっかりしておいで」
「……はい」
「話しづらいなら、俺から話そうか」
聖が即座にエンジンを止める。
七緒の返事が出遅れたため、言いだしづらいのではないかと感じたのだろう。
「いえ、大丈夫です。自分で話せます」