敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「ところでお見合いはどうだった?」
早足で歩きながら一弥が思いがけない質問を聖に投げる。
「……どうして一弥がその話を?」
誰にも話していない情報を、なぜ彼が知っているのか。
「院長が少し前に零していたんだよ。どうしたら聖をお見合いの場に連れ出せるかってね」
その言葉を聞いて嫌な予感を抱く。
「もしかして、一弥がクルーズ船でのお見合いを提案したんじゃないだろうな?」
「さすが聖だな。勘がいい。『聖なら正攻法でいってもダメですよ。見合いだって言ったら絶対に行きませんから』とは言った」
「お前なぁ」
肘で一弥の腕を小突く。
「いつまでも逃げてるわけにもいかないだろ? なにしろこの病院を継ぐ男なんだから。支えてくれる女性が必要だ」