敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「どんな女性だったんだ」
「かわいらしい女性。けど少しお節介だ」


クルーズ船で聖を必死に説得したのを思い返して笑みが零れる。


「聖にぴったりじゃないか。あれこれ口出しして世話してくれる〝オカン系女子〟」
「どういう意味だ」
「体力勝負の忙しい医者にはもってこい」


七緒に〝オカン系女子〟などと揶揄したら、また頬を膨らませて抗議するだろうなと想像して笑いが込み上げた。


「この子だって聖のインスピレーションが働いたのなら、放っておく手はないぞ。恋は早いもの順だ。いい子なら、すぐにほかの誰かに奪われる」


(インスピレーションか……)

それが働かなかったかと言えば嘘になる。そうでなければ、あのとき彼女に恋人のふりをさせはしなかっただろう。

聖との偽りの関係が終わりを迎えた後、容姿も性格も文句なしにかわいらしい七緒であればすぐに本物の恋人ができるだろう。
そう想像したら、やけに胸がざわついた。
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