敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
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聖との同居話はトントン拍子に進んでいた。

祖母の孝枝も当初言っていたように『七緒たちがしたいのなら、そうするのが一番』と歓迎。すぐにでも彼のマンションに越して、生活をサポートしてあげたらいいと送り出す気満々だ。

食生活が乱れた彼のため、できるだけ早く一緒に暮らしてほしいと彼の祖父からも請われ、その週末には簡単な引っ越しとなった。

キャリーバッグひとつとダンボール二箱に荷物を詰め、聖の迎えを待つが……。


「おばあちゃん、ほんとのほんとにひとりで平気?」


彼との同居を決めたものの、いざ当日になるとどうしても躊躇いが出てくる。愛し愛されている恋人と一緒に暮らすのならまだしも、周囲を騙しているのが引っ掛かるせいだろう。
孝枝が聖との付き合いを大喜びだから余計だ。

幾度となく確認するのは自分への問いかけでもあるし、年のいった祖母をひとりにする心配もある。


「平気だと何度も言ってるでしょう? 遠い国に行くわけじゃないんだし、私のことは心配しないで聖さんと仲良くやるのよ」
「なにかあったらすぐに呼んでよ? 約束だからね?」
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