あざと女子の恋の歌はあざとくない。
あたしと言えばかわいい。
かわいいと言えばあたし。
モテモテのあたしにオトせない男なんていない。
そのはずだったんだけど――…、
あたしのあざといが一切効かない男がいる。
「……。」
畳の上で汗をかきながら、真剣な表情で構えるこの男。
頭の一音のみで瞬時に聞き取り、目にも止まらぬ速さで札を取る。
全ての聴力を集中させ、他は何も耳に入れない。
読まれた札を、ただただ取る。
かるた部に入った時は、こいつに落ちるなんて思ってもみなかった。
部長がイケメンだったから、かるたなんて気楽にできそうだからと思って入部したのに、全てが大誤算。
かるたは想像以上にハードなスポーツだったし、部長目当てだったのに、今はこのかるた一筋のかるたバカのことしか見えない。
住江緋色。
悔しいけれど、私はこの男に恋をしている。