あざと女子の恋の歌はあざとくない。
もーー、ほんとになんであんな奴、好きになっちゃったの!?
男がほっとかないこのあたしのかわいさが、一切通用しないし!
普段は長い黒髪で顔もよく見えなくて、モサくてダサい地味男。
ボソボソ喋るし鈍臭いし、ほんっとに冴えない。
だけど、かるたのことになると人が変わる。
目つきが変わって凛々しくなって、誰よりも早く札を取る。
口下手のくせにかるたや百人一首のことになると、やたら饒舌になって。
好きなもののことになると、瞳をキラキラ輝かせて子どもみたい。
だけど、そのギャップにヤられてしまった。
かるたをしている時の緋色は、誰よりもカッコイイ。
その瞳に映るのが、かるたじゃなくてあたしだったらいいのにって――そう思ってしまったの。
でも、かるた一筋のかるたバカはかるた以外に興味がない。
だから最初からあたしのあざとテクが通用しなかったし、それがプライドを傷付けられて緋色の前ではあざといもかわいいも全部捨てていた。
そのせいで好きになってからも、今までの絡み方が抜けず――…
「もっと優しく教えなさいよ!このかるたバカ!!」
「華村の理解力が足りてないんだよ!」
今では好きな人の前でだけかわいくなれない女になってしまった。