わたしのかわいいだんなさま
人生は往々にしてままならない。
例えばそれは階級であったり、才能であったり、容姿であったり。たいていのものは生まれもってきた運命とやらで決定してしまう。 まれに努力次第でなんとかなる場合もあるにはあるけれど、多大なる労力と尽力が必要だ。しかしてその苦労を厭わず努力したところで、どうにもならないこともある。
そしてこの国で一番ままならない人生の道筋、それが『結婚』というものであった。
バズウェルド王国を含めた近隣の同盟諸国では、祭神の一柱である女神ハンナサクーニャの祝福宣託を受けたカップル同士で結婚すれば幸せになれる。
が、それ以外で結婚するともれなく不幸になる。
この説教は言い伝えのような曖昧なものではなく、純然たる事実である。
恋に燃え上がった二人が授かった宣託に異を唱え、強引に結ばれたが、結局見るも無惨な人生を過ごすことになったなどというのは良くある話。決してお伽噺話の中のものではないのだ。
事実、隣国の第二王子が婚約者の公爵令嬢との宣託を反故にし、平民上がりの男爵令嬢と結ばれた結果、王族の地位を追われ二人して国外追放となった挙げ句、平民以下の暮らしをしているという話は耳に新しい。
――これはもう祝福という名の呪いである。