わたしのかわいいだんなさま
「あらあら、上手にあんよができるようになりましたねえ」

 お座りが早すぎないかと悩んだそのまた20日後。なんだか悩むのがアホらしくなるほどのスピードで、アルヴィンは成長し続けている。
 すでに、彼の月齢は忘れることにした、メリズローサだった。
 カリンに至っては、個人差という大義名分を捨て、次の魔法の言葉を探し出した。

 ――王族、ぱネェっす。


「おっ、おー」

 メリズローサに向けて一生懸命声を出しているアルヴィンは、最近より一層表情豊かになってきていて更に可愛さアップしていると思う。

「おじょ、おーじょ」
「はい、はい。おじょおじょ」

 アルヴィンは同じ言葉を繰り返して喋っているが、一体何を言ってるのかはわからない。

「ねえ、何とおっしゃっているのかしらねえ?」
「私がお嬢様って言ってるのを聞いてらっしゃるから、お嬢様の名前呼んでるつもりなんじゃないですか?」

 そういえば、とはたと気がつく。
 確かにおじょおじょ言ってる時は、メリズローサに向かっている時だけだった。

「あら、いやだわ。じゃあ、しっかり教えて差し上げないと。私、アルヴィン殿下にお嬢様って呼ばれてしまうの?」
「それよりも、私がお嬢様のことメリズローサって呼び捨てにしましょうか? 殿下の御為に」
「断固として断るわ」

 その日、メリズローサはアルヴィンに「メリーですよ、メ、リ、ィー」と教えて半日を過ごした。

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