わたしのかわいいだんなさま
そんなこんなで、忙しくも優しい日々が過ぎていく。
このバズウェルド王国では、30日で1ヶ月、12ヶ月で1年となる暦を使用している。そしてメリズローサたちがこの白い離宮へ連れて来られてから120日になる。
ということはつまり単純計算で4ヵ月が経っていた。
「早いものよねえ」
「本当に早いですねえ」
「4ヶ月……よねえ」
「4ヶ月ですよ」
既にアルヴィン王太子は一人でしゃきしゃき歩くことが出来るし、メリズローサのこともメリーと愛称で呼ぶことが出来る。
なんだったら普通に意思の疎通も出来るし、お茶だって一人でマナー良く飲むことが出来た。
「カリン、お茶のお代わりをよこせ」
王太子らしく、少し偉そうにもなった。
「あらあら。そんなにお菓子を食べすぎると、お腹ぽんぽんで、またゲェーってなっちゃいますよー」
「っ、もうそんな年じゃない!早くしろ」
ちらりとメリズローサの方をうかがいながら「もう吐かないもん」と、ぷくっと頬を膨らませる。
幼児という枠を卒業したくらいの年頃なので、まだまだ仕草がいちいち可愛いと、メリズローサの頬が緩む。
「アルヴィン殿下、先ほどトンボがあちらの方に飛んでいくのを見ましたわ」
抱っこはもう無理だが、小さな手をぎゅっと握って歩くのが大好きなので、それとなく散歩に誘ってみる。案の定、アルヴィンは目をキラキラ輝かせて、メリズローサの手を取った。
「よし。見に行くぞ、メリー。」
「ええ、殿下。お供しますわ」
「じゃあお菓子の残りは私が片付けておきますねー」
背中から聞こえるもぐもぐという音は聞こえないふりをして、この時間がいつまでも続けばいいのに、そんなふうに思うメリズローサだった。