監督と、僕。
1 監督と僕
 覚えているのは、
とても大きな撮影所の中。


 「まだこんな小さい子供なのに

  たいしたもんだなあ!

  きみが今日、
  こうしてここに来て。

  今していることは、
  仕事なんダヨ

  わかる?お仕事。」

 小学校に上がりたてだった僕は、黙ったまま、
タダこくりとうなづいた。


 それが、
監督と僕との最初の出会いで、
その日から、
セットの組み替えなどの空き時間にできる限り、
僕を相手してくれた。


 監督が話して聞かせてくれた、
ひとつひとつが。


今思うと

全て

大事な事だった。



 監督は、
皆にやさしかったけれど。

特に僕にやさしかった、
気がする。
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