監督と、僕。

卒業

「かなしいだけは、
 ひとりのものにしちゃ 
 駄目だ。


 いつか怒りになって…

 吹き出して、
 手がつけられなくなる…。」



 普段黙って監督の話を
聴いていた僕は。

なぜか、今、
言わなきゃいけない気がして。



「…うれしい。」


と、

本当に、小さな声で、
言った。


監督は、満足そうに、
笑った。


僕は

あんまり緊張をして。


繋いでいた手をぎゅうっと
握りしめてしまった。



でもその後なんだか、
二人共。

泣きそうになったー。



 その日とうとう、監督は、
どっちでもイイ、きみの自由とは、
一度も言わなかった。
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