鍵取りゲーム
第1章 ハジマリ。
……コツ、コツ、

人気のないビルの階段に、足音だけが静かに響いていた。


「ああ、早くしないと遅れちゃうよ……!」


そう言いながら、足早と階段を掛け上がっていく男性がいた。

いや、『男性』というより、『少年』といった方がしっくりくるかもしれない。
彼は黒スーツをキッチリと着こなしている。
。体格的には男だろうが、帽子ををしっかりとかぶっているので何とも言えない。


その男は、いそげいそげ、などと小声で口走りながら階段を掛け上っていた。

某県、某市の中のあるちいさな町。

――志水町。



「今回のターゲットは、この中学校にしましょう。」

「人数的にも環境的にも問題なさそうだし……決定だな。」


ちいさなビルの中の屋上で、怪しげな会議が開かれていた。



出席者は全員黒づくめ。


「……しかし、出夢様はなにしているんだろうな?」


「あの方が会議に遅れるなんてめずらしい……。」


黒づくめの人間たちは、口々に喋り出す。


そこへ、1人の男が勢いよく入ってきた。


「ご、ごめんみんなっ!会議終わっちゃった!?」


さっきの小柄な男だ。


走って来たのか、スーツがすこしみだれている。


そこへ、黒づくめの中から1人の女性が彼に近づいた。


「出夢様、ネクタイが曲っておられますわよ?」


クスッと一言笑いをもらして、彼女はネクタイを素早く結び直した。


「ありがとう、ミラ。」


「ふふ、どういたしまして。さあ出夢様、会議に参加して下さいな?」


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