恋ノ初風
「いい匂い。ほんとに凛がつくったの?」
「まだ疑うかよ。ほんとに俺がつくりましたあ」
 体を起こした。凛がエプロンを外しているのが目に入る。ほんとに凛が作ったんだ。
「いただきます」
 私は両手を凛に向けて合わせた。
「おう。しっかり食えよ」
 そしてスプーンを持つ。味噌汁をすくい取ろうとするとスプーンに蒸気がつく。そのくらい熱いらしい。
「おいしい。凛が作ったんじゃないみたい」
 そう一言感想をこぼす。するとまた勉強机の椅子に座った凛はから「一言余計だ」とツッコミが来た。味のこさも柔らかさも申し分ない。というよりこの状況だからお礼と謝罪の言葉しかない。
「服着替えるか?お前汗かいてたし、部屋着のほうが過ごしやすいだろ」
「うん」
 ええ、そんなに汗かいてたんだ…。もしかして今よっぽど熱高いんじゃ…。私はおでこに手を当てる。このスプーンほどじゃないけれどそれでも明らかに熱があるという熱さだった。
「38.6分だってよ。保健室で測った」
 私の仕草を見て悟ったのか凛が言う。
「部屋着なんでもいいか?」
「うん。そこのタンスの中に入ってる」
 私は壁につくようにして置いてある白のタンスを指さした。
「これか」
 凛がタンスを開ける。凛だし、別に平気。逆に麗ちゃんとかだと嫌かもしれない。え、なんでだろう。凛は一応異性のはずなのに。おしゃれじゃないと思われるのが嫌だから?やっぱり凛が幼なじみだからかな。
「ほい。布団の上置いとくから、食べたら着替えろよ」
 と言っても凛がタンスの中をイジっているうちにもう食べ終わりそうになっていた。凛が少なめに入れておいてくれたおかげ。
「おう。食欲はあるのか。じゃあ持ってってくるから着替えとけ。着替えたら呼んで」
 お盆を持ち上げて足早に部屋を出ていった。おかしいな。少し前なら別に着替えくらい気にしてなかったのに。
 私は重い体を起こして体操服のジャージのファスナーを下ろす。そして半袖の体操服も脱いだ。ついでに下着も着替えておこうと思いタンスの一番上の段の中から1つ下着をとる。下着を着替え、凛がチョイスした薄い長袖長ズボンの部屋着に着替える。青色のサラサラ生地が肌に馴染む。少しひんやりして熱い体にはちょうどいい。ひと通り着替え、暑いしいらないから靴下もついでに脱いでおいた。
「着替えたよ」
 すると少しして凛が部屋に入ってきた。その顔はどことなくぎこちなかった。
「どうして?前までは着替えくらいでそんなにならなかったのに」
 
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