恋ノ初風
 私は体を起こしたまま凛に尋ねた。
「もう高校生なんだから男女で一線引くべきだ」
「私気にしないのに」
「お前がおかしいだけだ」
 凛がそういうのかぁ。凛の裸だって下着だけの姿も見てるんだからもう隠すものないでしょ。まあ成長したから恥ずかしいのかな?
 これ以上詰めても得しないしそれどころじゃなかったから、この話はここで打ち止めた。
 凛は薬も飲ませてくれて、しっかり眠るようにと私に言った。お母さんが帰ってくるまではここにいてくれるらしいので安心。薬を飲んで数十分後、私は夢うつつの狭間を何回か行き来したのち、深い眠りについていたらしい。
 次に目が覚めたときにはもう部屋が真っ暗だった。一発で夜になったんだなとわかった。部屋の電気をつけに行く。部屋の明るさで目が眩しかった。部屋を見渡す。凛は…いない。お母さん帰ってきたのかな。でもそれなら物音がするはず。探しに行けるような元気もなかったので部屋に留まる。ベットに戻ると、枕元に置き手紙が見えた。なんだろう。私は手紙を拓いた。
『心へ。ゆっくり寝るように。早くなおせよ!』
 凛の字だった。私は心が温かくなった。嬉しくて、少しだけ泣きそうになってしまった。
 手紙をおいて床につく。少し目を瞑っているとベランダの扉が開く音がした。凛が来たんだとすぐにわかった。私は目を開ける。
「わりぃ。起こしちゃった」
「んん。さっき起きた」
 私が首を振ると「なら良かった」と凛がいう。そして最早定位置となった私の勉強机の椅子に腰掛ける。
「どうだ。少しは楽になったか?」
「うん。朝に比べたらだいぶマシになったよ」
 私はそういった後に「凛のおかげだね!」と付け加えた。すると凛が照れているというのが頬の紅葉ですぐにわかった。凛は何言わずに私に近づいてきた。そして顔を近づけた。私はあらぬ期待をしてしまう。え…まだソレはいくらなんでも早いよ…!
「うん。熱はないな」
 凛は私の額に凛の額をあてた。私は何だかホッとした。でもあの距離まで凛と近づくことなんてないからドキドキして私まで照れちゃった。
 これじゃ熱あがっちゃうじゃん…。
「風呂入れそうなら入っとけよ。お前臭いから」
「失礼な!しょうがないでしょ朝から熱で汗かいてたんだから。デリカシーなさすぎ!」
「男の前で着替えるの気にしないやつには言われたくないわ」
 やっぱり臭ってたんだ…。まぁ凛だしいいか。凛の言葉に私は何も言えなくなった。
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