恋ノ初風
「違うよ。ただの幼馴染」
「幼馴染なの?いつから?」
「幼稚園から。だから3歳とか?」
 そこから数えたら、私達もう13年一緒にいるってことになるんだ。
「かっこいい人だね。いいなあ。好きじゃないの?えっと…」
「心」
「心ちゃん」
「ないない。ずっと一緒だったからそんな目で見れないよ」
「えーうそだー!」
「嘘じゃないよ。ホントだもん!」
 中学生の時もこんな会話した気がする。この年頃で仲良しな男女って言われたら、確かにそう見えてしまうのも仕方ないかもしれない。
 何も無かったとは言え、間違いなく凛は私にとって特別な存在。他の誰かと、凛みたいに仲良くなれるかはわからない。正直なれないと思う。お兄ちゃんのように頼もしくて優しくて、でもどこかおバカで、私も頼られて、それに
「あんなにかっこいいのに?」
 そう、凛はかっこいい。私はそんな凛が
「うん。でもないよ」
 と確実に言い切れれば良かったのに。追憶に足を入れると、彼のことばかりが頭に浮かぶ。もちろん思い出が多いからなんだけど。もし、私が凛のこと好きなら、もう少し羞恥心持つはず。それが恋って物語で読んだことある。だって私、今凛に何見られても恥ずかしくない気がするもん。それはもちろん凛だから。他の男子には絶対見られたくない!そんな私だから、凛のことを好きな人で見ているとはないんだと思う。
「これからが楽しみですな〜」
 口元を隠しイタズラな笑顔が少し不気味だ。私は「はあ…」とため息をついて「お好きにどうぞ」と冷淡に返した。
 クラスでの担任の先生との顔合わせが終わり、まだ太陽が頂点に登り切るか切らないかというところで下校ということになった。残念ながら凛は隣じゃなかった。隣になったのは全く知らない男子。中学校も違うし、近所でも見たことがない顔。最初は凛と隣が良かったなと夢物語を思いうがべていた。そのせいで先生の話も上の空って感じだった。初日から踏んだり蹴ったり…。
 一度家に帰り、私服に着替えた私達はせっかく昼で終わったからと今遊びに来ている。食事処に入って一息ついたところで私は事を述べた。
「は?お前話聞いてなかったのかよ」
「そうなの。どうしよう…。ねえ先生何言ってたか聞いてた?」
「俺は今それを聞こうとしてたんだど…」
 なにか大事なこと言ってたらどうしよう。と頭の中を不安が泳ぐ。
「そうだ。お前さっき誰かと話してたじゃん。その人に聞くのは?」
< 4 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop