恋ノ初風
 私も荷物が多いけど、凛も凛で私といい勝負の荷物の量。
「まぁな。欲しい物あったから仕方ない」
「あー。それ私も思ってたやつなのに!先言われた!」
 たくさん買ったとはいえ、私達は高校生。限度を考えてちゃんとお手頃価格のものを買ったつもり。
「それよりさあ、私達もう高校生だよ?ついに高校生だよ?」
 私は冷静になった。まだ浮ついて実感がない。まだ明日も春休みで、明けたら中学校に行くものだと思っていた。そんなことはもうとっくの昔に置いてこないと。
「それ昨日も話しただろ」
「あれは凛からだったもん」
「そうだけど…」
 凛に言っておきながら無理矢理な言い分だなと私も気づいていた。
「良い出会いあるといいなあ」
「なに彼氏ほしいの?」
「当たり前じゃん!高校生だよ?」
「気を焦るなよ」
「だって高校生ってさあ、屋上でご飯食べたり、放課後はカフェでおしゃべりしたりできるんでしょ?すごいいいじゃん!」
「それ前読んでた漫画の話?」
「凛も覚えてる?やっぱ女の子はあんな恋に憧れるもんだよ!」
 私は昔から大好きな漫画がある。その漫画をきっかけに古語が好きになったし、何より主人公も可愛いし、男の子もみんなかっこよかった。キュンキュンして、私もあんな恋ができたらいいなってずっと思っている。そんな子供っぽい憧れを持って高校に入った。
「心あの本大好きだよな」
 今でも私の部屋の本棚にはその漫画が全巻並べられている。
「高校で見つかるといいな。王子様」
「王子様って、そんな大げさな」
 私はくすりと笑った。凛の口からまさか王子様だなんて聞ける日が来るなんて、めったに無いことだったから。
「別に、俺がなってあげてもいいんだぞ」
 凛は右手で私の顎をくいっと持ち上げて、自分の顔と近づけた。もう少し近づけば、凛の唇に当たってしまいそう。息がかかる程に近い。無性にドキドキして、体温が上がっているのを実感する。凛の瞳に映る私が見える。多分今私は目を丸くして頬を紅葉させているんだろう。
「なんてな」
 凛は笑顔でそう言って手を離した。
「え?」
「心、こんなので照れてたら他のイケメンに落とされるぞ」
「う、うるさい」
 心臓の音が、ただただうるさくて耳障りだった。もう、気づきたくないのに。
「ほら早く行くぞ。母さんたちが待ってる」
 私を置いて歩きだす自称王子様。そ言われると、幼馴染というより双子に近いような。
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