沼っちゃうほど甘い溺愛ラリーなんて、続けられません
瞳を天井に向け悩んでいると
「ゆ~の~ちゃん」
席に座る私と桃園くんの間の通路に、女子がさっと入ってきた。
同じクラスの夏希ちゃん。
クラスの女子を束ねるオシャレJK。
ちょっと気が強いところがあるけれど、友達思いの人気者。
「由乃ちゃん、今ちょっといい? 二人だけで話したいことがあってさ」
夏希ちゃんは桃園くんに背を向けたまま、私の机の横に両手をついている。
話ってなんだろう?
夏希ちゃんは、私に笑ってくれている。
でも、私の第六感が警告音を発しているんだ。
いい話じゃないような気がするって。
「みんなに聞かれたくない話なの。由乃ちゃん、一緒に来て」
「……うん」
私は、夏希ちゃんの後を追って廊下に出た。
一言もしゃべらない。
お互い無言のまま。
二人を包む重ぐるしい空気が、私の肺を締め付ける。