狂愛メランコリー
「俺が殺してもループすんのかな? それとも死んで終わりかな? ……なぁ、試してみようぜ」
彼は一層強く私の首を絞めた。
「……っ」
声すら出せずに呻き喘ぐ。
逃れようと後ずされば、縁から真っ逆さまに落ちてしまう。
心の底から愉しむような向坂くんの双眸を見て、ああ、と思った。
────狂ってる。
もともと向坂くんがそういう性質を持ち合わせていたのか、ループを繰り返して死が身近になるうちに変わってしまったのかは分からない。
ただ、どちらにしても……きっかけは私なのだろう。
ループの中で何度か私の死を目にするうち、本能的な猟奇性を目覚めさせてしまった。
血に惹かれ、さらに過激なものを求めるようになった。
苦しむ顔が見たい。痛がる声を聞きたい。血が見たい。こと切れる瞬間を見たい。
……そんなふうに。
そのために今度は彼がその手で殺そうと────。
ループの中で向坂くんが私の死に立ち会ったとしても、その記憶は何度か消えたはずだった。
けれど、本能には鮮烈に焼きついているのだろう。
(そういうこと、か……)
思えば、兆候はあった。
殺されたときのことを食い下がって詳しく聞きたがったり、私が殺される日に彼の現れるタイミングが不自然だったり。
『いや、別に。……気になったことがあって』
気になっていたのは、人を殺す感覚のこと、だったのだろうか。
私に寄り添うふりをして、理人がいなくなるのを待っていたの?
じっと機会を窺って、自分のエゴを優先して。