狂愛メランコリー

(どうして……)

 心の中で無意味な問いを繰り返した。

 それほどまでに受け入れ難い現実だった。

 最初は、ううん、一度くらいは、本気で私を心配してくれていたって信じたい……。

「やっと邪魔者が消えてくれたからな。これで思う存分お前を痛めつけられる」

 ぎりぎりと、爪が肌に食い込む。

 ループの中で、彼が理人を殺そうとして、その理人がいなくなって、きっと向坂くんの(たが)は完全に外れてしまったのだ。

「死ぬときは強く願えよ。“やり直したい”って……。一度きりでくたばるなよ、頼むから。足りねぇよ、そんなんじゃ」

 意識が朦朧とした。

 頭の中が霧がかって、何も考えられない。

 痛みも苦しみも遠のいて、死が迫り寄ってくる。

 向坂くんは愉悦を滲ませ、せせら笑う。

「これからは何度でも、何度でも何度でも何度でも……」

 視界が歪み、涙がこぼれ落ちた────。

「俺がお前を殺してやる」



*



 アラームが鳴り響く。

 画面をタップして停止すると、ロック画面を見た。

 ────5月7日。午前7時。

「…………」

 理人の死の悲しみに暮れながら、起き上がった私はベッドから下りた。



【完】
※『純愛メランコリー』に続く
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