狂愛メランコリー
最終章 狂愛メランコリー
第19話
*
「どうして……?」
彼の瞳がゆらゆらと揺れる。
戸惑い、信じられない、というように。
────放課後の教室。
私たち以外には誰もいなくて、吹き抜ける風がカーテンを煽った。
「ごめん、理人。でも、私もう────」
「謝るんだ?」
彼が息をこぼすように笑った。
嘲るみたいに、あるいは失望したみたいに。
そんな冷たい態度、初めて目の当たりにした。
「ひどいね。僕のそばにいる、って言ってくれたのは菜乃でしょ。僕、ずっと信じてたのに」
理人は私を責めるような眼差しをした。
たまらず彼に言い返す。
「私だって、そうしたかった……!」
何だか泣きそうになって、ぎゅう、と両手で拳を握り締めた。
「でも、無理なんだもん。もう私、限界なの」
理人のそばにいたくても、周囲がそれを許してくれない。
私への嫌がらせは日に日にエスカレートして、私はどんどんひとりぼっちになっていって。
孤独で、惨めで、悪意に野ざらしにされて。
理人だって知っていてもおかしくないはずなのに、何にも言わない。助けてくれない。
私の心を犠牲にして、自分の望みを押し通しているだけ。
「苦しいの。辛くて、もう我慢出来ない。そんな思いしてまで、理人のそばに無理矢理いる必要ある……!?」
感情が爆発した。
込み上げる涙が何なのかは分からなかったけれど、とにかく胸が詰まった。
「……菜乃は、僕のものなのに」
ぽつりと理人が呟く。
「違う……。違う、私はものじゃない」
ましてや彼の所有物でもない。
今までずっと目を背けてきた現実だった。
理人が私の気持ちを蔑ろにしていること。
自分のためだけに私と一緒にいたこと。
目を背け、耳を塞いできた。鈍感になろうとしていた。
(でも、もう私は一人じゃないから)
変われる。頑張れる。
これからは理人に依存しなくても、ひとりぼっちじゃない。
「理人。私、好きな人が出来たの」
思い切って告げた。
いつだって、優しさと勇気と自信をくれる“彼”が気付かせてくれた。
彼と出会って、曇っていた視界が晴れた。
このままじゃいけない、って一歩踏み出せた。
「え……?」
「どうして……?」
彼の瞳がゆらゆらと揺れる。
戸惑い、信じられない、というように。
────放課後の教室。
私たち以外には誰もいなくて、吹き抜ける風がカーテンを煽った。
「ごめん、理人。でも、私もう────」
「謝るんだ?」
彼が息をこぼすように笑った。
嘲るみたいに、あるいは失望したみたいに。
そんな冷たい態度、初めて目の当たりにした。
「ひどいね。僕のそばにいる、って言ってくれたのは菜乃でしょ。僕、ずっと信じてたのに」
理人は私を責めるような眼差しをした。
たまらず彼に言い返す。
「私だって、そうしたかった……!」
何だか泣きそうになって、ぎゅう、と両手で拳を握り締めた。
「でも、無理なんだもん。もう私、限界なの」
理人のそばにいたくても、周囲がそれを許してくれない。
私への嫌がらせは日に日にエスカレートして、私はどんどんひとりぼっちになっていって。
孤独で、惨めで、悪意に野ざらしにされて。
理人だって知っていてもおかしくないはずなのに、何にも言わない。助けてくれない。
私の心を犠牲にして、自分の望みを押し通しているだけ。
「苦しいの。辛くて、もう我慢出来ない。そんな思いしてまで、理人のそばに無理矢理いる必要ある……!?」
感情が爆発した。
込み上げる涙が何なのかは分からなかったけれど、とにかく胸が詰まった。
「……菜乃は、僕のものなのに」
ぽつりと理人が呟く。
「違う……。違う、私はものじゃない」
ましてや彼の所有物でもない。
今までずっと目を背けてきた現実だった。
理人が私の気持ちを蔑ろにしていること。
自分のためだけに私と一緒にいたこと。
目を背け、耳を塞いできた。鈍感になろうとしていた。
(でも、もう私は一人じゃないから)
変われる。頑張れる。
これからは理人に依存しなくても、ひとりぼっちじゃない。
「理人。私、好きな人が出来たの」
思い切って告げた。
いつだって、優しさと勇気と自信をくれる“彼”が気付かせてくれた。
彼と出会って、曇っていた視界が晴れた。
このままじゃいけない、って一歩踏み出せた。
「え……?」