年下男子は天邪鬼
引っ越してから、
三週間が経とうとしていたが
俺はその間の記憶がない。

ただひたすらに胸の痛みから逃れるように
働いていたのだ。

食事もあまり喉を通らなくて
安斎さんにも顔色が悪いと
心配されたが、「大丈夫です」と
無理矢理笑顔を張り付ける。


姉から母さんのお見舞いに行けとメールが何度か入ったが俺は弱っている母さんを見るのが怖くてそれを無視していた。

俺はあらゆるものから逃げていたのだ。

逃げて逃げてそれでも抜け出せない
暗闇の中で俺はとうとう限界を迎えた。

会社で倒れたのだった。

食事をまともに食べていなかったから
栄養失調になっていたのだ。

病院で点滴を打ってもらい
それから一週間ほど休暇をもらった。

自宅に戻って目を瞑ると
夢うつつに依子が“ちゃんと食べろ”と
怒っている姿が浮かんでくる。

俺はそんなに怒るなら、
早く来て俺をこの暗闇から救い出してくれよと投げ掛ける。

俺は夢の中でも
身勝手に依子に救いを求めていた。


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