年下男子は天邪鬼
そして、私は部長のデスクの前でとまると
仕事中にも関わらず会社のパソコンで将棋のゲームをしている部長のデスクを両手でバンっと勢いよく叩いた。

部長はビクッと肩を震わせるとびっくりした表情で「藍田くん...?」目の前の私を凝視したまま固まっている。

「田沼部長!!」

私は机に両手をついたまま
大きな声で名前を叫んだ。

周りの社員も何事かとこちらに注目している。

「えっ?なになに?いきなりっ。ちゃんと仕事はしてるよ?」

部長はゲームをしていたのを咎められるのかと勘違いしたのか、そっとゲームの画面を閉じる。

「部長!私はこの会社に入社してから
今の今まで一度も担当した仕事の納期が
間に合わなかったことはないですよね?!」


「えっ?あ、ああ!そうとも!君はとても優秀な人材だ」

部長は私がおかしくなったのだと思ったのか
戸惑いながら、懸命によいしょする。

「それに私は部長のパワハラ、セクハラまがいの言葉にも文句ひとつ言わず
連日の残業や休日出勤にも耐えてきました!」

「ああ!君の頑張りは評価してるよ!」

部長はそう言いながらも冷や汗混じりに「でも、パワハラセクハラしてるなんて上には言わないでね..」とこっそり私に小声で囁く。

「なので、急なお願いですが、今から退社してもよろしいでしょうかっ」

「ああ、わかった!
きっと君は仕事し過ぎで少し疲れが溜まってるようだ。ちょっと休んだほうがいい。」

私は尚も小声で“帰ってもいいから、上には余計なこと言わないでね”と懇願する部長を無視して「ありがとうございます。それではお先に失礼します」とペコリと頭を下げると急いでフロアから飛び出した。
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