年下男子は天邪鬼
そして、更衣室から自分のバックを手に取るとエレベーターに乗り込み、
ビルのエントランスを走って駆け抜けた。

しかし、ビルを出たところであることに気付いてふと立ち止まる。

しまった...大地の新居って何処だ?

後先考えずに飛び出した私は
会社のビルの前で途方にくれていると
ふいに自分のバックの中に入っているスマートフォンが震えた。

バックからスマートフォンを取り出して見ると安斉さんから一通メールが届いていた。

メールを開いてみると
そこには大地の新しい住所とともに
“依子さん頑張れ!僕は君の幸せを願ってます”と私を応援する文章が添えられていた。

私は心の中で安斉さんにありがとうと
呟くと再び駆け出した。

そして途中、コンビニで食料を買い込むとタクシーをひろい、大地の新居へと向かった。

大地の新居はまだ真新しいマンションだった。
エントランスの自動ドアを潜ると
うちのアパートとは違い、
オートロックのついたセキュリティ万全の
住居だ。

私は安斉さんのメールを見て大地の部屋番号を打ち込むと呼び出しボタンを押した。

呼び出し音と共に私の心臓も緊張と不安で
ドッドッドッと激しく鼓動を刻む。

そして、少し経ってオートロックのスピーカーから“依子..?”と少し驚いたような大地の声が響いた。

「大地、いきなりごめん!安斉さんから大地が倒れたって聞いてお見舞いに来たんだけど..」

私はそこまで説明すると急に押し掛けて迷惑じゃないかなと不安に襲われる。

すると、スピーカーから「入って」と大地の声が聞こえてオートロックが解錠され、目の前の自動ドアが開いた。

私は言われた通り、空いた扉から入ると
エレベーターに乗り込んだ。

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