年下男子は天邪鬼
「食べたきゃ自分で買いに行きなさいよっ」

私がフンっとそっぽを向くと
いきなり大地が後ろから私をギュッと抱き締めた。
ふいをつかれ、私の心臓がドクンと大きく脈打った。


「依子、来てくれてありがとう...」

そして大地は私を抱き締めたままボソリと呟いた。

私はその言葉に嬉しくなって「うん」と
笑顔が溢れる。

「依子の顔見てたら、なんか全てが大丈夫なような気がしてきた。」


私は気恥ずかしくなってわざと
「能天気な顔してるってこと?」とはぐらかした。

大地はフッと笑いながら「そうかも...」と否定しない。

「そこは否定しなさいよっ。」

私が突っ込むと大地は
「でも、それが今の俺には有り難いんだ」
と抱き締める腕に力を込めた。

「ほらっ、早く食べてお母さんに会いに行こう。きっと大地が来るの待ってるよ。」

「うん。でももう少しだけこうしていたい。こうしてるとすごく安心するんだ」

そう私の耳元で呟く大地の声は微かに震えていて、私はこくんと頷くと
大地の気がすむまでその大きな体に優しく包まれていた。


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