年下男子は天邪鬼
俺は待合室に向かうと依子を探した。
しかし、先程まで依子が座っていた長椅子には依子の姿はなく1枚のメモが
椅子の上に置いてあるだけだった。

メモには“私は帰るからお母さんとゆっくり話してね。依子”と綺麗な字で書かれていた。

今、帰ったのならまだ間に合うかもしれない。

俺が急いで依子を追いかけようとした時、
「宮城さんのご家族の方ですよね?」
と看護師さんに呼び止められた。

「えっ?あっ、はい」

俺は気もそぞろに返事をする。

「今から手術の当日の流れやご準備していただくものについて説明したいのでご家族の方もご一緒に聞いて頂きたいのですが、宜しいですか?」

看護師さんの問い掛けに今すぐにでも依子を追いかけたい気持ちなのにも関わらず、母の手術に関わることと言われれば「はい、分かりました」と言うよりほかない。

俺は後ろ髪をひかれる思いで看護師さんのあとに続いた。
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