年下男子は天邪鬼
そう自分に言い聞かせながらも
気持ちが落ち着かず
事務所に戻る前に休憩室に立ち寄った。

自販機からコーヒーを選ぶと
缶のタブを開けながら
自販機横のソファーに腰掛けた。


すると、
「宮城、戻ってきて早々さぼりか?」
直属の上司の安斉さんが
呆れたように休憩室に入ってきた。

「サボりではありませんよ。
疲れたからチャージです」

安斉さんは年は離れているが、
仕事も出来て頼りになるし
多趣味で話も面白いので
職場で一番尊敬している先輩だ。

「その割にはさっき受付の子から
連絡先もらってたらしいな。
事務員の子が目撃してたらしくて
事務所はその話題で大盛り上がりだぞ」


「まじっすか...戻りにくい...」

「もてる男は羨ましいね...」

安斉さんはからかうようにニヤリと頬笑む。

「安斉さんこそ、モテるのになんで彼女作らないんですか?気になる人とかいないんですか?」

結構、仕事も出来るし人当たりも良い安斉さんはアプローチされている話は聞くのにも関わらず、浮いた話がなかった。

俺が問いかけながらコーヒーを口に入れると
安斉さんが紅茶の缶を手に隣に腰掛けた。

そして、
「藍田依子...」
と、呟いたので俺はブハッと
思わずコーヒーをふきだした。

安斉さんは「きったねーな」と顔をしかめながらもハンカチを差し出してくれる。

俺は「すみません」と
それを受け取りながらも心臓はバクバク
音を鳴らしていた。






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