年下男子は天邪鬼
「そんな女々しいこと言うわけないだろ」

「ならいいけど...
高いもの頼んでもい...?」

「いいよ」

「やったー♪♪♪
近くに私の行きつけの小料理屋さんが
あるの!!
美味しくて誰にも教えたくなかったけど
大地には教えてあげる!」


依子は大喜びで両手を高く挙げながら
喜びを体全体で表現している。

「寒いから熱燗、呑みたい...
あそこの海老汁も美味しいのよね...」

依子はウシシッと楽しそうに何を食べようか
想像を膨らませている。

大地はコロコロと表情の変わる依子に
柔らかい笑みを浮かべる。

そして、二人が歩くこと5分...

依子の行きつけの小料理屋は
大通りから一本入った所に
ポツンと小さく店を構えていた。

依子は慣れた様子で暖簾を潜ると
引き戸をガラガラっと開けて入っていく。

大地は「こんな所に小料理屋あったんだ」
とキョロキョロしながらも後に続く。

「あらっ、依子ちゃんいらっしゃい。
久しぶりじゃない?」

暖かい店内に入ると、
女将さんが柔らかい笑顔で出迎えてくれて
心もホッと温まるようだ。
ここは私の疲れた時の癒しの場なのだ。

「女将さん、お久しぶりです。
毎日でも寄りたいところですが、最近新しいパソコン買い替えたので金欠で...
今日はお財布を連れて来ました」

「おいっ」

大地は雑な紹介をされて不貞腐れている。

「冗談だって...」

「やだっ。いい男じゃない!!」女将さんは大地を見て目を輝かせながら続けざまに
「もしかして依子ちゃんの彼氏?」と問いかけた。

「「違います!!!」」

二人揃って否定したので「息もピッタリじゃない」と女将さんは嬉しそうだ。
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