年下男子は天邪鬼
「もしかして、話したいとか嬉しいとか送ったのか?」

大地は怪訝な表情を浮かべている。

「大地が重すぎとか言うから、省いて
当たり障りのない文面にしたわよ」

「あぁ、そう...」

大地は安堵の表情を浮かべるが、
ちょうどそこに女将さんが刺身の盛り合わせを持ってきたので依子はそれに気がつかない。

「私にもようやく春が来たのかな...
長かったわ、冬が...
長すぎてもう一生独身を覚悟してたわ」

「別に焦って恋愛する歳でもないだろ?
今は晩婚化の時代だし、30過ぎて独身なんてざらだろ」

「そりゃあ、私達の時代はね...
でも、それを許さないのが親世代なのよ。
帰省する度に良い人はいないのか?って
耳にタコができるほど聞かれて、いないと分かればがっかりされて肩身の狭い思いをするのよ。」

「だからって焦って自分を安売りするのか?
ちゃんと自分が好きだと思う相手と
交際したほうが良いと思うけど!」

あまりに大地が怒ったように
ムキになって話すので
依子は困惑の表情を浮かべる。

「今日はやけに突っ掛かるよね...?
しかも、ただ食事するだけなのに。
それに好きになるかどうかなんて、話してみないと分からないじゃない。
職場だってちがうんだから...」

お酒も入ってるから、あまり問いただされるとまた泣きたくなってくる。

その時、テーブルの端に置いてあった私のスマートフォンがブルッと震えてた。
二人が明るくなったスマートフォンの画面に目を向けると安斉さんからのメールが届いたことを知らせていた。
私はチラッと大地の方に目を向けると
明らかに不機嫌な顔に今はメールのしないほうが良いと瞬時に悟る。
私はさっとスマートフォンを手に取ると
バックにそれをおさめた。

「返信しなくていいのか?」

聞いてくる割に、大地は不機嫌な表情を隠そうとはしない。

「いいの!今は大地と飲んでるんだから、
後でいいよ。
それより、食べよ!ここのお刺身は新鮮で
めちゃくちゃ美味しいから食べて食べて」

私は必死に話題を変えようと取り繕った。




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