年下男子は天邪鬼

大地は私が薦めたお刺身を「うまい」と
食べながらもまだ機嫌が良くなる気配はない。

大地はなぜこんなに安斉さんのこととなると
ご機嫌斜めになるのだろうか...

もしや、見掛けによらず安斉さんは
後輩には厳しくて大地は安斉さんに対して
苦手意識があるとか...
いや、安斉さんは自社でも評判いいと聞いてるしそれはないか...

じゃあ、大地が仕事上でミスして
上司である安斉さんにこっぴどく怒られたとか...
大地はプライド高そうだし、
その線が一番有力だろう...

「仕事でミスなんて誰にもあるわよぅ。
私なんて未だにミスしてばかりなんだから。上司に怒られるたびにこのクソ親父め、
禿げてしまえと何度思ったことか...」

依子は勝手に大地の気持ちを解釈して
うんうんと頷いてみせる。

「急に何の話だよ?」

大地は怪訝な表情を浮かべながら
歯で焼き鳥を串から引き抜いてたべている。

「大丈夫!!
大地なら今の仕事もきっと
上手くいくから」

私は励ますように笑顔を向けた。

「だから何なんだよ?」

大地は首を捻りながらも
依子に励まされて照れくさそうにしている。

「ほら、元気出して!
どんどん飲んで食べてね!」

大地の機嫌が直ってきて
依子もホッとして
お酒を大地のお猪口に注いでいく。

「俺の奢りだけどね...

ほんと変なやつ...」

大地は呆れ笑いしながらも、
注がれたお酒をグイッと飲みほした。
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