年下男子は天邪鬼
「おい、待てよ。おばさん!!」

しつこくおばさんと言ってくるガキだが
大量のお酒を手にちゃんと着いてきている。

私はアパートに入ると4階建ての階段を
上がっていく。

私の部屋は4階建ての最上階だ。
レベーターがないから上がりきる頃には
はあはあと息が上がっていた。

何はともあれ、この男に運んでもらって
良かった...と、部屋の鍵を開けていると
同じくはあはあと息の上がった男が階段を上ってきた。

「ありがとう。私のうちここだから、
それ玄関のとこ置いといて。」

知らないおっさんなら部屋を知られたら身の危険を流石に感じるが、この男は年下で
私のことおばさんと罵ってくるあたり、襲われることはないだろうと不用心にもドアを開けて男が入るのを待つ。

男は「おばさんのうちってここ...?」と戸惑いの表情を向ける。

「そうだけど、何?」と私は怪訝そうに眉をしかめる。

「いや...俺のうちこっち...」と、手が塞がっている男はチラッと瞳だけ隣の部屋に向けた。

私は「えっ!?」っと咄嗟に胸元を
両手で隠した。

「いやいや、俺だってストーカーするなら相手選ぶから」と男の失礼極りない言い種に
私は恥ずかしくなって「冗談よ!置いたらさっさと帰ってよ」とぶっきらぼうに答えた。

私の様子にブッと吹き出した男は
玄関に入ると缶を玄関マットの上に置いていく。

「ありがとうね。じゃあおやすみ」と私は玄関のドアを開けたまま彼を帰るように則す。

男は私をチラッと見ると少し考えてから「じゃあ、お邪魔しま~す」と靴を脱ぎだした。
そして、「えっ?えっ?」と戸惑う私をよそに勝手にズンズンと廊下を入っていく。


「ちょっと何勝手にあがってんのよ!!」

私は急いで靴を脱ぎ捨てると
彼を追いかけて部屋に入った。

築年数は経っているけど1LDKでリビングと寝室は別になっている。

リビングに先に入った男は
「女ならもう少し綺麗にしろよ」と
辺りをキョロキョロ見渡しながら
失礼な感想を投げ掛ける。

雑誌や漫画はテーブルに出しっぱなし
朝飲みかけていたコーヒーカップも
流しにそのままだ。
先ほど脱いだ服も
ソファーの上に投げ捨てられたままで
到底、人様に見せられる部屋ではない。

「こらー、人の部屋をじろじろ見ないでよ!!
帰って!!」

私は必死に男の背中を押して追い返そうとするが、男はヒョイっと身をかわすと
私の服を避けることなくそのままソファーに
ドサッと腰を掛けた。


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