年下男子は天邪鬼
「これなんか可愛いと思わない?」

洋服店で楽しそうに物色する依子は
白いふわふわのニットワンピースを
手に取ると自分の体にその服を当てた。

「ちょっと若すぎじゃないか?」

俺は眉根を寄せて
自分の思いとは別のことを口走る。

バカ依子!!

そんな可愛い服を着ていったら
安斉さんどころか他の男も寄ってくるだろうが!!

俺は急いで代わりの服を物色する。


そして、黒いタートルネックのニットにベージュのワイドパンツを手に取った。

「それよりも、
こっちの方が、いいと思う!」

「う~ん。悪くはないと思うけど、
デートにはちょっと地味じゃないかな?」

依子は不満げに眉を潜めた。

「バカだな!
安斉さんの年を考えてみろ!
そんな可愛いらしい服より絶対こっちの
大人っぽい服のほうが良いに決まってる」

「なるほど...それはそうかもしれない」

単純な依子はすぐに納得すると
俺の服を手に取り、いそいそと試着室へ向かった。

こんなアッサリと言いくるめられるとは..
変な男に騙されないか心配になる。

そして3分後、
着替えを終えて試着室から出てきた依子に
またもや自分の選択を悔やむ。

「どうかな?」
と、クルリと回る依子。

これはこれで、可愛い...

「やっぱり色味がちょっと重たいかもな...」

俺は難癖をつけて再び服を物色し始めるが
「えっ?これでいいよ」
依子に止められてしまう。

「大地ってセンスいいよね。
これ気に入っちゃった」

そう言って可愛いく頬笑む依子に
言いくるめられて結局買ってしまうあたり、
俺も相当単純だと思う。

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