年下男子は天邪鬼
もし、これでもし誘われなくなったとして
こんな美味しくて高いお店は
なかなか自分ではこれないのだから
沢山食べておけば後悔はしない。

開き直った私は強いのだ。

私は深く考えることを放棄して
出された料理を次々と平らげていく。

それでも、安斉さんは引くどころか
お酒を飲みながら
嬉しそうにこちらを眺めている。

まるで私の食べっぷりが
お酒のつまみかのように...

さすがにこの犬に餌付けされてるかのような状況に気まずくなってきて
「すみません。私、気が効かないですよね。このサラダ美味しいですよ」
咄嗟に目の前の海老とアボカドのサラダを
小皿に取り分けて差し出した。

「あっ、ごめん。
気を遣わせてしまったね。
あまりにも依子さんが
美味しそうに食べるから
つい魅入ってしまってたよ」

安斉さんは申し訳なさげに笑った。

これは褒めているのなのだろうか?

「僕のことは気にしないで 
遠慮なく好きなだけ食べて」

安斉さんはそう言うが
あまりに見られていると
食べにくい。

「安斉さんはなにか趣味とかあるんですか?」

私は安斉さんの気を逸らすべく
まるでお見合いのような
当たり障りのない質問をぶつけた。




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