年下男子は天邪鬼

安斉さんが真剣なら私もちゃんと
本当の自分を包み隠さず
曝け出さないといけないような気がする。

自炊なんてほとんどしてないし
掃除だって苦手だ。
休日は漫画を読みながら
パジャマのままゴロゴロしてばかりで、
女子力の欠片もない。

もし付き合うようになったら
いつかバレてしまうだろう。

ちゃんと自分の本来の姿を知ってもらって
それでもいいって言ってもらってからでないと返事はできない。

偽ったまま付き合えば
また元彼のときの様な
二の舞いになるだろう。

私は意を決して
ビールの入ったジョッキを手に取ると
グッとビールをあおった。

そして安斉さんに向きあおうとした
その時、
いきなり窓ガラス越しに大地の顔が
ヌッと出てきた。

グホッッ

私はびっくりして思いきり咳き込んだ。

ゴホゴホっと苦しそうに咳き込む私に
安斉さんは「大丈夫ですか!?」と
おしぼりを差し出す。

「すみません。ありがとうございます」

私はおしぼりを受け取ると口元を抑えた。

幻覚...?

私が窓ガラスに再び目を移すと
ガラス越しに大地がニッコリと
微笑みながら手を振っている。

「なんで...?」

私は驚きのあまり目を見開いた。
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