年下男子は天邪鬼
取り敢えず、御手洗いを済ませた私は
重い足取りで女子トイレの扉を開けた。

すると、隣の男子トイレへと向かって歩いてくる大地とバッタリ遭遇する。

大地は私の存在に気付くとギクリと
肩を震わせてクルッと踵を返した。

そして、もと来た道を戻ろうとする大地を
逃すまいと私はすかさずその首根っこを捕まえた。

「待て待て待て。男子トイレはこっちですよ?」


「あぁ!そうですね!
依子さん、ありがとうございます」

大地はわざとらしい口振りで
お礼を言うと私の横をすり抜けて
男子トイレに逃げ込もうとする。

「こら、ちょっと待て。」

私は横をすり抜けようとする大地の前に
片手をドンッと壁に当てて逃げ場をなくした。

「依子さん、なんでしょう...?」

追い込まれた大地は白々しい笑みを浮かべて言った。

「なんでしょう?じゃないでしょ!
何故ここに来たの?」

「偶然でびっくりですよね」

まだシラを切り通そうとする大地に私は眉根を寄せた。

「こんな偶然あるとおもう?」

私はグッと顔を近づけて
大地を追い詰める。
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