年下男子は天邪鬼
場の雰囲気にのまれてしまったのはいえ、
なぜ自分からキスをしてしまったのか。

30歳にもなって
自分の自制心のなさに呆れてしまう。


そして席に戻ると
「依子さん大丈夫?遅いから心配したよ」
と安斉さんは心配そうな顔で言った。


「す、すみません。ちょっと、トイレが混んでまして. . .」

私は咄嗟に嘘で誤魔化すと、椅子を引いて腰を下ろした。

ふしだらな上、嘘つきな女でごめんなさい。

「それなら良かった」と何処までも
良い人な安斉さんに私は罪悪感でいたたまれない気持ちになった。

しかし、
大地とキスしてて遅くなりましたなんて
この場で言えるわけがない。


そして私に続いて大地もトイレから帰ってきた。

また余計なことを言い出さないか緊張が走るが、大地は何事もなかったように安斉さんと白石さんと会話をしだした。

チラッと大地のほうに視線をやるが
目があってもふいっと反らされた。

目くらい合わせてくれてもいいのに. . .

一人意識している自分が馬鹿みたいだ。


あぁ. . .きっと、先ほどのキスも大地の
気まぐれなんだ。

急に目すら合わせてくれなくなった大地に
私はもてあそばれた気分になり
やけ酒のようにお酒を煽った。

年下男に惑わさせれるんじゃないと
過去に戻って殴ってでも止めたい気分だ。
< 70 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop