年下男子は天邪鬼

安斉さんは今度は私に目を向けると
「依子さんはまだ飲めますか?」
目を細めて問いかけた。

「は、はい。私はまだ大丈夫です」

私はコクリと頷いた。

「じゃあ、白石さんは宮城に任せて
僕達はもう一軒行こうか」

私は返事をする前にチラリと大地の顔をうかがったが、大地と目は合ったものの何の反応も返してくれない。

私は安斉さんに「はい。二人でもう一件行きましょうか。」と微笑み返した。

何も言ってくれない大地に私は半ばヤケクソで返事をした。
きっと大地は嫉妬なんてしてくれないんだから. . .


「行きつけのバーがあるんです。
マスターにも依子さん紹介したいですし。」

紹介だなんて、まるで彼女扱いされているようで私は顔を赤らめてコクリと頷く。

すると、一部始終黙って見ていた大地が
急に「イタタタタッ」とお腹をおさえてその場にうずくまった。

私達は一斉にうずくまる大地へと目をやった。

大地は「あ〜っ、イテ〜」と
顔を歪めている。

安斉さんは大地の大袈裟な痛がり方に
「宮城、大丈夫か?」と問いかけた。

「ちょっと、急に腹がっ、イタタタッ」
 
なんか、ちょっと芝居がかってると思っているのは私だけだろうか. . .

苦しんでいる風の大地を前に
私はひとり疑心の目を向ける。
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