年下男子は天邪鬼


「何かに当たったか?」

心優しい安斉さんはこの嘘くさい演技を
本気に心配しているようだ。

「そうかもしれないです。
なので、今回は白石さんは送っていけそうにないです。安斉さん代わりにお願いしてもいいですか?」

うずくまった大地はお腹を押さえながら
安斉さんに上目遣いに問い掛けた。

そう言われたら安斉さんも「ああ. ..」と
了承するしか他ない。

すると、大地は安斉さんが返事をする否や立ち上がり「依子さん、ご近所さんのよしみで送ってください。」と私の手を取った。

そして私が「えっ?えっ?」
と戸惑っているのを大地は無視して手を繋いだままズンズンと歩き出す。

後ろを振り返ると安斉さんと白石さんがポカンと呆気にとられたようにたたずんでいる。

そして大地はちょうど通り掛かったタクシーに手を上げて止めると、「ちょっとっ!!」と抵抗しようとする私を開いたドアに有無を言わさず押し込んだ。

大地はタクシーに乗り込む前に安斉さん達に
「それではお先に失礼します」と
一言挨拶を入れて私の隣に座り、運転手さんに行き先を告げて車を発進させた。




< 73 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop