年下男子は天邪鬼
「宮城、きついこと言ってすまない。
でも僕は彼女が新入社員時から
見てきてるんだ。
入れ替わりの激しい職業で
何度となく、泣き腫らした顔で仕事している姿や残業続きで疲れきった中でも明るく対応してくれる彼女を見てきたんだ。
そんな彼女の悲しむ顔を見たくない。」

安斉さんの言葉で本気で依子の幸せを願っているのが痛いほど伝わってくる。

「もし、その場の感情だけの中途半端な
気持ちなら依子さんを振り回さないで欲しい。」

この感情は中途半端なんかじゃない。
そう思っていても言い返すことができないのはまだ先のことまで考えることができないからだ。
俺は悔しさに唇を噛み締める。

「別に強制でもないし、脅してるわけでもない。僕はただ依子さんには悲しい思いをしてほしくないだけだから。それだけはわかって欲しい。
宮城が真剣に先のことまで考えての結論なら何もの言わないし。依子さんが幸せになるなら黙って身を引くつもりだよ。」

俺は依子が結婚式のCMを羨ましそうに見つめる横顔を思い出し、思わず息を吐いた。

「安斉さんはその先のことまで考えてますか?」

「あぁ。」

安斉さんはコクリと頷いた。

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