年下男子は天邪鬼
「依子...?」

私に気づいた大地は一瞬、後ろめたそうな表情をした。

私はそれに気づかないふりをして
「おはよう!なんだ。引っ越しするんだ!
教えてくれれば手伝ったのに」
笑顔でわざと明るい声で話しかけた。

「ああ。もうちょっと新しくて広いところに
引っ越そうと思って」

「そっか。ここからは近いの?」

「ん..。結構離れてるかな...」

大地はそう言いながらよそよそしく笑う。
もし私のことを彼女だと思っていてくれているのなら
引っ越し先を濁すことはないだろう...

「じゃあ、あんまり会えなくなるね..」

のどの奥がギュッとなるのを飲み込みながら
震える声をなんとか押し出す。

「そうだな...」

大地は私と目を合わすことなく、小さく呟いた。

そこは会いに行くよとか来てとか言ってほしかった。
そうだと肯定してしまうことが、
私たちの終わりを意味しているのだと悟って、私の心臓がズキズキと痛み出す。
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