年下男子は天邪鬼
啜り泣く私の前で大地は思い詰めた表情を浮かべている。

「振るなら振るでちゃんと言ってくれなきゃ
わかんないよ...」

私の言葉に大地は
「依子、すまない...
俺は依子と付き合うつもりはない。
だから俺のことは忘れてほしい」
頭を下げた。

こんだけ人の気持ちを振り回して
大地のこと好きにさせておいて
腹も立つし言いたいことは山ほどあるのに
しゃくりが上がって言葉を出すことができない。

「俺なんかのことは忘れて
依子は安斎さんに幸せにしてもらってくれ...」

なによそれ?
私が好きなのは安斎さんじゃない。
もうすでに心は大地に奪われてしまっているのに
今更、ほかの人に私の幸せを託すなんて酷いよ...

私はもう大地と話す気になれなくなり
「もういい。さようなら」と言って
自分の部屋に駆け込むと
カギをかけるなり、その場に泣き崩れた。
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