ヴァンパイアの花嫁

「これより、オスロ王国元第一王女レジーナ・ヨークの処刑を執り行う！」

死刑執行人が広場中に響く大声で言うと、処刑を見に来た見物人である国民は声を上げる。その内容は王女の処刑の中止を訴えるものではなく、強い怒りを含んだものばかりであった。

白い囚人用のワンピースを着せられ、広場の中央に用意されたギロチンをレジーナは感情のない瞳で見上げる。これから、この大きな刃が自分の首を斬り落とすのだ。だが、レジーナはそのことに対して何も思わない。

「よくも国王陛下と王子を！」

「この人殺しめ！」

「お前は人の皮を被った魔女だ！」

「早くその魔女を殺せ！」

民衆の野次がレジーナの耳に届く。ここにいる誰もがレジーナの死を望んでいる。レジーナは民衆ではなく上を見上げた。ギロチンは視界に入れないよう、雲一つない青空だけを見つめる。そして思った。

（私、何もやっていないのに……）

レジーナは父親である国王と、双子の兄を殺害した罪でこの場所に立っている。だが、彼女は血の繋がった父と兄を殺してなどいない。