壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
「たくさん愛したいから覚悟しててね?」
「はぅ!? な、何を……んっ……!」
遠慮なく葉緩にキスをする。
どれだけ重ねてもこればかりはなかなか慣れない。
ましてや好きな人と意識すればするほど、その熱は増していく。
葉緩は固く目を瞑り、シーツを握りしめていた。
(この人、本当にキス魔! また壁に押し付けて!! 壁にポスター貼っておけばいいのでは!?)
じりじりと詰め寄るように葵斗との距離が近づき、壁へと追いやられていく。
壁との距離が0となり、これでは隠れているときにキスされる状態となんら変わりなかった。
(本当に、ムカつきます。 心臓が破裂したら呪ってやる)
それでも突き放すことが出来ないあたり、惚れた弱みというもの。
甘い性格の自分に腹を立てながらも、葵斗の背に手をまわし、受け入れていた。
唇が離れると、葉緩は火照った顔を隠すように葵斗の肩に顔をうずめる。
静かになるとどうしても寂しいという感情が溢れてきた。
これまで共に過ごしてきたのは白夜であり、その白夜がいなくなることは葉緩の心のよりどころが変化するということ。
甘えることに不慣れな葉緩は、葵斗の心臓の音に耳を傾け、落ち着こうとしていた。
「……白夜のこと、聞いてくれますか?」
「うん、聞かせて」
やさしい鼓動が、葉緩の甘えどころであった。