壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
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「えっ!? 葉緩ちゃん、望月くんと付き合い始めたの!?」
「は、はい……。 姫と桐哉くんには最初にご報告したくて」
葉緩と葵斗は、最初に桐哉と柚姫に報告し、繋がれた手を見せる。
最初は驚いていた二人であったが、しっかりと指が絡み繋がれた手を見て安堵の笑みを浮かべる。
デレデレとしながら葉緩は二人に向き合っていた。
「そっか、おめでとう」
葉緩の幸せを心から祝福する柚姫。
妙に気持ちが穏やかで、安心していた。
ふわりと笑って、葉緩の頭を撫でていた。
「良かったなぁ、葵斗。 もう俺に八つ当たりするなよ?」
ニヤッと笑い、肘で葵斗をつつく桐哉。
まったく動じず、葵斗は誇らしげに葉緩の手を握りしめ、笑みを浮かべていた。
「しないよ? 俺はすごーく幸せだから」
「葵斗、喧嘩売ってる?」
「別に? 今度こそ責任もって葉緩を大事にするし」
あぁ、と声を上げて柚姫に目を向ける。
「なんだったら柚ちゃんにもお礼しないといけないから」
「葵斗くん何を言ってるのですか!?」
二人は前世のことを覚えていない。
人は通常、前世を覚えてないものだ。
葉緩もまた前世を覚えていなかったわけだが、今こうして思い出すと何故、桐哉が魂の主だったかを理解する。
子を守る方法に悩んでいた葉名に、生きていく道筋を作り、柚との子と分け隔てなく可愛がってくれた人だった。
桐哉が葉名を見つけて手を差し出してくれなかったら、きっと葉名も子も死んでいた。
生涯の忠誠は、葉緩になっても変わらず桐哉を見つけた瞬間に「この方が魂の主」と認識し、今日まで至る。
柚姫が現れ、桐哉が恋をし、将来の伴侶と確信したのもこのためだろう。
どの女の子が桐哉に近づこうとも、葉緩はいつも違うと思っていた、