壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
「姫! ラッピングしましょう!」

「う、うん……」


紅潮した頬があいらしい。


「柚姫は桐哉くんに渡すんですよね?」

「う、うん。 渡せたらいいなって思ってる」


桐哉を想い、照れ笑いをする柚姫は最高峰のかわいさだ。

その笑みは桐哉ではなく、葉緩のハートまでをも射抜く。


「姫なら大丈夫です! 絶対に渡してくださいね! くれぐれも他の人に食べさせるなんてことないように!」

「う、うん……。が、がんばります……」


念を押し、柚姫の行動を制限する。


(よし、あとは現場を見守って結ばれればおっけーです。ぐふっ、主様と姫の血筋が子々孫々繁栄されていくことが私の喜びです)


なんといってもこれが忍びのお役目ほかならぬ。

陰ながら主を守るために、忠義を尽くす。

だが主だけではなく、その存在を未来まで繋ぐことこそ大義となるのであった。


(私は父上にでもあげましょう! たまには母上に素直になっていただきたいものです)


能天気に片づけをしながらノーマルクッキーを頬張る。


「……いいんだよね?」


葉緩の表情を伺う柚姫の微細な変化に気付きもしない。

憂いながら柚姫は黙って食器を片付けにいった。

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