Melts in your mouth

私の心を揺さぶる男





恋心程に面倒で厄介な存在はないな。

以前まではその辺でくたばってろバーカなんて思っていた平野に対して、不可抗力で口許が緩んでしまう。


てか、どう見ても休憩なんて取れるタスクの量じゃなかったのに今日中に終わらさないといけないタスクの目途がもう立ったのだろうか。



「あんた、こんな場所で油売ってる暇あんの?」

「ぇえ!?まだ働けって言うんですか!?世は令和なのに労働環境がまるで戦時中の捕虜じゃーん。」

「いやでも今日中のタスク、かなりあったでしょ。」

「それならどうにかゴールが見えたので心配無用です。」

「……相変わらず腹立たしい男め。」

「何で!?惚れ直すところじゃないですか!?何で俺愛しの永琉先輩に睨まれちゃってるの…ぴえん。」



何処にそんな元気があるのか、シクシクとわざとらしく泣き真似をする相手に素直に白い目を向ける。

お前全然病み上がりの顔付きしてっぞ。本当に大丈夫なのかよ。


それにしても、この男の要領の良さは尊敬せざるを得ない。平野を好きだと認める以前の平野嫌いの私は、そんな平野が恨めしくて憎たらしかった。


だけどそれは多分、認めたくないのだけれど、ただの嫉妬心だったのだろう。



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