Melts in your mouth
平野が風邪からの復帰を遂げて早いもので二週間以上が経過しようとしている。いつの間にか鬱陶しかった梅雨も終わりを告げて、陽射しが日に日に強くなり夏の匂いを感じる様になった。
終わりの見えなかった…何ならもう終わりなんて一生こないから全てを放棄してそのまま日本から消息不明になってしまおうかという安易で阿呆な思考も過ったsucréの夏休み特別仕様号の仕事もいよいよ終盤。
どういうわけか、漫画家の先生方の原稿の仕上がりがほぼ計画通りに進み納期日までに入稿されそうな雰囲気が漂い始めたおかげで、漸くsucré編集部にも希望の兆しが見え始めた。
…と言っても、私と平野と滅茶苦茶戦力になってくれている中島ちゃんにしかその兆しは感じられなかったに違いない。
高橋編集長は一生優雅にコーヒーを啜ってた。あの人のあの精神力はある意味最強である。そんな高橋編集長の囲いの如くいつも会社内の噂話でキャッキャウフフと盛り上がっている他のsucré編集部メンバーも、日を追うごとに高橋編集長っぽくなっている。一体どんなウイルスを持ち込んでんだあの人。